女性自身 05.10.4号掲載 田光マコト、サザンを語る

■女性自身 05.10.4 発売号~インディーズ界の桑田佳祐(!?)が語るサザンオールスターズ

光文社の雑誌「女性自身」サザンオールスターズ特集に田光マコトが7ページ執筆させていただきました。過去のアルバム解説や年表、さらにサザン好きの芸能人=爆笑問題への直接インタビューなど・・・。週刊誌ということもあり、買いそびれてしまった方のためにその中の一部を公開!!
紙面の都合上カットされちゃった部分も多数あるので、せっかくだから原文を載せちゃいます。修正前なので多少文章的におかしな所もありますが、ワタクシのバンド観やサザンに対する尊敬の意味も込めて書きましたので是非ご一読あれ!
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<< 冒頭文>>

2005年最大の話題作、もはや国民的アーティストとなったサザンオールスターズのニューアルバムが届いた。前作から実に7年ぶり、レコーディングに2年以上を費やして制作された超大作は2枚組の全30曲。
『勝手にシンドバッド』での衝撃のデビューから27年。常に日本の音楽シーンをリードし続け、その間に生まれた名曲は数知れず。時代と共に歩み、ドラマやCMだけでなく我々の思い出のテーマソングとして、"気がつけばいつもそこにはサザンがいた"のだ。そんな彼らのアルバム発売を記念して、過去の軌跡を振り返りつつ、ニューアルバムの全貌、ファンからの熱いメッセージ等ーーー老若男女問わず世代を超えて支持され、現在もなお話題を振りまく日本が誇るモンスター・バンド、"サザンオールスターズ"の総力特集!!


<< サザンオールスターズの魅力>>

サザンの魅力はやはり"バンド"であること。山下達郎やユーミンetc...ソロ・アーティストで息の長い人気を保っているアーティストは他にもまだまだいる。しかしグループとなると、そこには人間関係や音楽的なエゴ、時には大人の事情(?)さえも絡み合って長続きさせることは本当に難しい。
しかし彼らの原点はアマチュア時代からの最高の仲間---桑田佳祐の才能は勿論だが、メンバーが互いに信頼し合い、その中で生まれる奇抜なアイデアや遊び心は音楽に対する初期衝動を失わないために絶大な効力を発揮している。そういう意味ではソロでの曲とサザンとしての曲では桑田さん自身の曲の書き方も違うのではないだろうか。「やつらがいれば大丈夫!」的な開放感はどんなに才能のあるセッション・ミュージシャンを集めてもやはり"バンド"でなければ出せないものなのである。
すなわちサザンの楽曲はひとつひとつの音にメンバーの裸のままの人間性が確実に感じ取れるということ。彼らが楽曲を心から愛し、あれやこれや言いながらも楽しんで演奏している姿ーーーサポート・ミュージシャンの音や打ち込みのコンピューターによるフレーズでさえもそのプログラムしている過程が目に浮かぶのだ。そしてそうして作り上げられた音の温かさには我々の夢や希望、切なさ、怒り、エロス、バカ騒ぎ...すべてを受け入れてくれるパワーが宿っていくのである。だからこそ、サザンオールスターズはいつまで経っても新鮮で色褪せないのだ。


<< ニュー・アルバム/キラー・ストリート>>

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『キラーストリート』というタイトルとジャケット写真を見た瞬間、多少ロックに詳しい方ならばまずあのザ・ビートルズの『アビイ・ロード』を思い出すだろう。『アビイ・ロード』とはビートルズの実質的なラストアルバムで、それまで仲違いさえしていたメンバーが、もう一度集まってすべてをさらけ出して制作されたという集大成的なアルバムである。(タイトルの由来は当時ビートルズが使用していたEMIスタジオの近くの通りの名前。「キラーストリート」もサザンが使用している青山のビクタースタジオの前の通り。)
『アビイ・ロード』はそれまでのどのアルバムよりも"ビートルズらしさ"が溢れ出ていて、それでいて実験的でもあり、何十年も経った今でもロック少年のバイブルとも言える作品だ。もちろんミュージシャンともなれば「いつかはああいう作品を作ってみたい」という憧れは誰もが持っていると言っても過言ではない。しかしそれは文字通り"憧れ"であって、いまだかつてその"バイブル"に挑戦したアーティストは日本、いや世界中を探しても思い当たる節がない。聖書を一から自分で作ろうなんて誰も思わないはずだ。ところが我らがサザンオールスターズはついにそのとてつもない大作業に手を出してしまったのである。7年間という年月は彼らの中で、そのために必要最小限の期間だったのだろう。

シングルとして既に発売されていた曲に関しては、もはやとやかく言うまでもないが、気になるのは7年間の間に単発で発表されてきた数々のヒット曲に新しい曲達がどのように絡んで、どのような完成形を見せたのだろうか?といったところだ。
まずアルバム全体の色を大きく象徴してるのが、タイトルとは裏腹に切なくなるような美しいメロディーラインを持つ『ロックンロール・スーパーマン』。"ロックンロール"という言葉をこんなにもさり気なく言えてしまうオヤジはもう桑田佳祐しか他にいない。おそらく彼の言う"ロックンロール"とはジャンルではなく音楽すべてーーーロックもジャズも歌謡曲も演歌も、何もかもをひっくるめたものなのだろう。もしかしたらそれは音楽のみならず桑田さん自身、サザン自体を一言で表現している言葉なのかもしれない。

先日観に行ったミュージカル『WE WILL ROCK YOU』でこんな台詞があった。ーーー「俺がロックを唄うのは金の為でも世界の為でもない。ただベイビーがそこにいるからなんだ」ーーー『キラー・ストリート』にはラブソングの割合がここ数枚のアルバムよりも多いような気がする。初期のサザンに見られるストレートな『恋するレスポール』みたいなものから『限りなき永遠の愛』のようなスケールの大きなものまで、さらにハラボーが唄う『リボンの騎士』などに見られるちょっとエッチな世界もサザンには欠かせない"ロック"の要素だ。もちろん『セイシェル~海の聖者~』『ごめんよ僕が馬鹿だった』等、もしシングルで発売されていたら大ヒットしたであろうキャッチーなナンバーも目白押し。

とにかくこのアルバムをこれだけのスペースで語るのは申し訳ないがまず不可能(爆)。27年間の自分達を全てさらけだし、集大成させた上で、なおかつ時代とリンクした新しい所へも目を向けているといったサザンの熱い思いが存分に感じ取れる。日本一の"ロックンロール"オヤジ達が日本の音楽史上に燦然と輝く"ロックのバイブル"を完成させたことは間違いない。